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2001年オンライン書店の動向と課題

新しい動きを見せ始めた一年
アマゾン・ジャパン、BOL、bk1など、大手のオンライン書店が華々しく登場した前年に比べると、2001年のオンライン書店の動きは「地味」なものでした。


各社が「送料無料」サービスを次々と打ち出すような激烈なサービス競争もなりをひそめたこともあってか、全体としてどこか話題性を欠いていた感は否めません。


ただ、「地味」ながらも、各社が新しい「動き」をはじめたのも事実。
そこに着目しながら、サービス面で気になった動きを簡単に振りかえってみます。


気になった動き
1. アマゾン・ジャパン、アフィリエイト・プログラム開始
それまでにも数社がこのプログラムを採用していましたが、ついに5月にアマゾンが参入しました。
アフィリエイト・プログラムとは、サイトの運営者が書店と提携して、リンクを経由して購入があった場合、数パーセントの報酬が発生するシステムのこと。

アマゾンの場合、プログラムに参加することで各ページにリンクを貼ったり表紙画像を利用する権利が与えられるので、書籍の紹介サイトを運営する人たちにとっては朗報でした。

ただ、個人のサイトに「ビジネス」の原理を導入することについては賛否両論があり、各サイトがこのプログラムとどのように付き合っていくかは今後も課題となりそう。


2. BOL撤退
テレビCMもやっていたBOLが撤退。
オープンからわずか一年。なんとも寂しい結果に…
その後、bk1に統合され、「業界再編か!」と一時期騒がれました。


3. bk1、ブックス安藤オープン
オンライン書店ではじめての試みもなされました。
7月、bk1では店長、安藤哲也さんが、サイト内に自身の書店をオープン。
彼は書店人としてのご自身の経験を本にしたほどの実力の持ち主。

巷で売れている書籍ではなく、独自の観点からセレクトした本を精力的に紹介しています。
ベストセラーの書籍を全面に売り込む書店が多い中で、ただ自分の問題意識に沿って本を販売する姿勢はオンライン書店の中でも異彩を放っています。

サイトでは、日記も公開されていて、「顔の見える本屋さん」を演出されています。


4. イーエスブックス、「みんなの書店」開始
イーエスブックスが5月にオープンした「みんなの書店」も新しい試みでした。

イーエスブックスのサイト上に無料で自分専用のページをもつことができ、そこで自分は「店長」としてお薦めの本の紹介ができるという仕組み。
読者書評の新しい形ともいえるでしょう。


5. アマゾン・ジャパン、ebookの発売開始
新聞でも取り上げられるなど近年電子本(ebook)が話題になりつつあります。
11月にはAdobe社が電子本専用のリーダーを無償公開し、それに対応したebookも続々発売されました。

日本でもアマゾン・ジャパンが洋書コーナーにebook専用のコーナーを設けるなど、徐々に身近なものになりつつあります。
ebookの主流は英語ですが、電子書店パブリなどで日本語のebookも多く販売されるようになりました。

しかし、流通コストが低い割りに価格が割高なこと、パソコンのディスプレイが文字を読むには向いていないこと、ブロードバンド環境でなければダウンロードがほぼ不可能なことなど、まだまだ課題は多いのが現状です。


9.11以降の課題
こうしていろいろと新たな動きが見られましたが、2001年は「本」や「出版」のあり方そのものが大きく問われた年でもありました。


そのことを痛感させたのは9.11のあの出来事。
アメリカでのテロの後、言語学者のノーム・チョムスキーら多くの知識人がネット上で発言し、その議論が世界中に瞬時に広がっていきました。
当然それらの情報はフリー(無料)であるために自由にアクセスすることができました。


これは、大手出版社が発行する出版物よりも、ネットで(しかも無料で)発信される議論の方が影響力を持つことが珍しくなくなった現代を象徴する出来事のように思われます。
「本」のあり方が変わってたことは以前から指摘されていますが、今回の出来事はネットの優位性を改めて認識させる結果となりました。


最近では個々人が自らの言論や発言を発表することができるようになりましたが、それはこれまでの出版・流通・販売のシステムに大きな変更を迫ることになるかもしれません。
こうした状況にオンライン書店がどのように対応していくのかということも今後の大きな課題になるかもしれません。


2002年1月11日
石塚輝紀
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