2006年10月26日 (おススメの本)
太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』を読んだ
お笑い芸人でありながら政治家にズバズバとモノを言う爆笑問題の太田光さんと、人類学・宗教学の分野で右に出るものがいない多摩美術大学芸術人類学研究所所長の中沢新一さんの対談です。
そのタイトルとおり「憲法九条を世界遺産に」と提唱するのですが、単なる護憲論ではないことがこの作品の面白さ。ともすれば、憲法9条保持=左翼となりがちですが、彼らは「右翼と左翼」という二項対立自体を疑問視します。
憲法9条を守ることは、相手に攻められることを覚悟するだけの強さが必要で、「右翼」という仮想敵を作り出し、単に護憲を叫ぶ単純な思考を乗り越えようとしています。その一方で、憲法九条の撤廃を主張する改憲論の矛盾を鋭く指摘しています。
ともすれば、「右翼」にも「左翼」にも反感を買いかねない危険な立場に立ちながらも、単純な二項対立の図式ではとらえることのできない「本質」をわかりやすく解いてくれます。
素敵な作品を数多く残しながらも、田中智学らの思想に傾注した宮沢賢治の矛盾を手がかりに、人の中にある矛盾、社会の中の矛盾をそのまま受け入れる覚悟を迫ります。世の中を単純化せずに、矛盾をそのまま引き受ける強さ…
憲法九条を守ろうと単に叫ぶのではなく、それを守るだけの覚悟を問う問題作です。単なる理想論でも、安直な現実論でもない。割り切ることのできない複雑な人間存在のありようを今一度見つめ直すことから憲法九条をまもる道筋を示してくれています。
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いかに遺すか、
「九条」
奇跡の輝き