2006年04月11日 (おススメの本)
劇団ひとり『陰日向に咲く』を読む
ちょっとシュールなお笑い芸人 劇団ひとり。
15歳のころから芸人としてのキャリアをもつ彼が初めて小説に挑んだのがこの『陰日向に咲く』です。
とても読みやすいショートストーリー集。
最初は“タレント本”なのだと思って買うつもりはまったくなかったのですが、
書評などで絶賛されていたために思わず購入してしまいました。
読んでみると……
すごいの一言。
聞けば、執筆に一年かかったということで、緻密に計算されているなと感じました。
その構成力に脱帽です。
登場するのはいわゆる落ちこぼれ。
消費者金融に追われてオレオレ詐欺に走る青年、
ホームレスにあこがれて“公園デビュー”を果たす男性、
デジタルカメラの使い方が分からず夢を追うことにあきらめかける少女、
落ち目のアイドルの追っかけをしながら彼女の成功を切に願う青年……
ついてないというか、惨めというか、
何をするにもうまくいかない彼らに、優しい視線を投げかける作者。
つらい人生にも小さな希望を抱かせるような構成に、
励まされるような感覚を受ける読者も多いはず。
癒しと励ましと希望。
すんなりと読める作品ですが、読後の満足感は高い作品だと思いました。